特定小型原付(電動キックボード)と運転免許の落とし穴 〜教習指導員が伝えたい本当に大切な話〜
最近、街中で見かけることが増えた「特定小型原動機付自転車」(いわゆる電動キックボードなど)。
16歳以上であれば免許不要で乗れる手軽さが魅力ですが、「免許を持っていないから、自分の免許には関係ない」と思い込むのは非常に危険です。
今回は、指導員の立場から、「意外と知られていない特定小型原付と運転免許の落とし穴」について解説します。
1. 特定小型原付で「免停」になるケースがある?
「免許がいらない乗り物なのに、車の免許が停止(免停)になる」
一見、矛盾しているように聞こえますよね。
しかしこれは、実際に起こり得るルールです。
特定小型原付に乗っていて、以下のような重大な交通違反(主に赤切符対象)をした場合、警察の取り締まりだけでなく、すでに持っている自動車や二輪の免許に行政処分が科される可能性があります。
・酒気帯び運転・酒酔い運転
・ひき逃げなどの重大事故
・著しく交通の危険を生じさせる行為
これらは、「免許不要の乗り物」であっても、「道路交通上、極めて危険な行為をする人物」と判断されるためです。
2. なぜ「免許不要」なのに「免許」に影響するのか?
理由は、道路交通法にある「点数によらない行政処分」という仕組みにあります。
通常の車の違反は、違反点数が積み重なって免停になります。
しかし、特定小型原付の違反には点数はつきません。
それでも免許に影響するのは、公安委員会が次のような判断をできるからです。
将来、道路交通に著しい危険を生じさせるおそれがある者については、免許の停止・取消を行うことができる
たとえば、特定小型原付で飲酒運転をした人は、「自動車を運転させても同じような危険行為をする可能性が高い」と判断されます。
つまり、運転者としての適格性がないと見なされるわけです。
これは、自転車(軽車両)での飲酒運転でも同様に適用される可能性がある、非常に重いルールです。
3. 違反後に「これから免許を取る」場合はどうなる?
現在免許を持っていない方も、注意が必要です。
特定小型原付で重大な違反をしたあとに教習所へ通い、試験に合格しても、次のような処分を受ける可能性があります。
免許の拒否・保留
試験に合格しても、過去の違反歴から「免許を与えるのにふさわしくない」と判断され、一定期間、免許の交付が拒否・保留されることがあります。
欠格期間の設定
非常に悪質な違反の場合、数年間「免許を取得する資格がない期間(欠格期間)」が設定されることもあります。
この期間中は、教習所を卒業しても免許証を手にすることはできません。
指導員からのアドバイス
「特定小型原付」は、法律上は自転車に近い扱いですが、公道に出れば他人の命を預かる立派な「車両の運転者」です。
・お酒を飲んだら、絶対に絶対に乗らない
・信号、一時停止などの基本ルールを必ず守る
・「免許がないから大丈夫」という油断を捨てる
そして、何より忘れてはいけないのが「事故を起こした時の責任」です。
事故を起こした時の責任
特定小型原付での事故も、自動車やバイクと同じく、
被害者への賠償責任が発生します。
もし重大な人身事故を起こしてしまった場合、
数千万円〜億単位の損害賠償を請求される可能性もあります。
・任意保険に入っていない
・任意保険の補償が不十分
こうしたケースでは、運転者自身の将来が大きく狂ってしまうことも珍しくありません。
特定小型原付に乗る際は、
賠償責任保険への加入も、車両の整備と同じくらい重要な「運転者の義務」
だと覚えておいてください。
便利で身近な乗り物だからこそ、正しい知識が必要です。あなたの将来のカーライフ、そして今持っている大切な免許を守るためにも、ルールを正しく理解し、安全に利用しましょう。
教習所では、特定小型原付や新しい交通ルールについての質問も歓迎しています。分からないことがあれば、いつでも指導員に気軽に聞いてくださいね。



